Day5.midnight

海底は常に深夜だ。朝も、昼も、単純な夜すらも存在しない。今も、ゆっくりゆっくりと海の底へ沈んでいる。

私は、深夜が好きだ。一日の中で1番。小さい頃からそうだったように思う。両親が寝静まり、独り起きているその時間は、唯一自由な時間だった。周波数を合わせ、好きなアーティストのラジオを聴いては、布団の中で笑みを浮かべていた。勇気を出してメールを送り、読まれた時には、心臓が跳ねるのが分かるくらいだった。この深夜の時間を、他の場所に居る知らない人と共有している。パーソナリティの声を介して、空気の上を波に乗り、世界中へと伝わっていく、その中の一人が自分だと思うと、独りではないような気がした。

あの時、私が聴いていた番組は数年前に終わったらしい。いつからかラジオを聴くことはなくなったが、未だにそのアーティストの曲は聴くことがある。途中からまるで別のアーティストのように方向性が変わって行き、私が好きだった頃の面影はなくなっていった。それでもそのアーティストの曲を聴き続けたのは、好きとか嫌いとかではない、青春の惰性であるように感じる。縋っていたい場所が、そこにはあるような気がした。

これを書きながらふと思いだしたように潜水艇のラジオを起動する。ダイヤルを回し、暗い電波の海をかき分け、やっと光を見つけた。男の声が聞こえてくる。

「現在も危険な状態が続いています。不要不急の外出は避けましょう。また、常に空気を綺麗に保ちましょう。そして、人を愛することは絶対に止めましょう。」

今は昼のニュースの時間だったか。